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セミナーレポート 「VR+インタラクティブコンテンツ制作セミナー」1

VRとインタラクティブの世界の現在地を知るセミナー

2017年1月25日、東京・品川のダイキン工業において行われたのは、VR(ヴァーチャルリアリティ)コンテンツや、インタラクティブコンテンツの制作現場に携わるスペシャリストを招いた「VR+インタラクティブコンテンツ制作セミナー」。急速な進化を遂げつつあるVR、インタラクティブコンテンツ作品は、いかにして生まれるのか。また、その世界を支えるソフトウェア、ハードウェア、そして、制作者の技術とは、どんなものなのか。
登壇したのは、3組5名のスピーカーの方々。
音楽と映像が融合したアート作品、エンターテイメント作品を生み出し続ける、TETSUJIN – AUDIO VISUAL(以下、TETSUJIN)からは、高橋哲人氏、モシ村マイコ氏のお二人。Oculus RiftやHTC Viveといったヘッドマウントディスプレイを使ってMayaを制御できるプラグイン「MARUI VR Maya Plugin」を開発した、合同会社MARUI-PlugInのMax Krichenbauer氏。そして、オートデスク株式会社(以下、オートデスク)のメディア&エンターテイメント部門の技術マネージャー、門口 洋一郎氏、加瀬 秀雄氏。

 

アートユニット「TETSUJIN」の、創造性に満ちた挑戦

最初に登壇されたのは、TETSUJINのお二人。近年発表したインタラクティブ作品について、そのコンセプト作りから、制作における「3ds Max」や「Stingray」の使用方法などについて、幅広く語っていただいた。
TETSUJINは、多摩美術大学を卒業した高橋氏が、音楽系の映像会社勤務を経たのちに2006年に立ち上げたアートプロジェクト。アート作品、広告、TVCMのCG映像作品、各種ヴィジュアル作品、音楽作品などを制作している。
人気アーティストのライヴで用いられた3DCG映像、プロジェクションマッピングなどに続いて紹介されたのは、高橋氏が「(それまでのTETSUJINのものとは)ちょっと毛色の違う作品」と自ら評した2作品。TETSUJINでは、2010年のモシ村氏参加に伴い、高橋氏の感性と、モシ村氏の持ち味を融合してより面白いアート表現を模索するためのレーベル「appatune」を設立している。

 

奏でる音に合わせて、陶芸作品に絵付けする

まず紹介されたのは、そのappatuneレーベル名義で制作された2013年の作品「Hello! You are Dish Jockey」だ。TETSUJINのお二人と、陶芸家の山野辺彩氏によるコラボレーション制作は、陶器の器にプロジェクションマッピングを施すというユニークな作品。付随するバッドを叩いたり、ターンテーブルを触ったりすることによって、音が鳴り、器の上で絵柄が踊り出す。観客は、自分が演奏する音によって器が「絵付け」されていくというインタラクティブで不思議な感覚を味わうことができるという仕組みだ。

 

 

コラボ作品としてのコンセプトとしては、山野辺氏の作品を買いに来る人に、いかにして訴求していくのかがポイントとなった。器の横でアニメーションを流すといったありきたりなやり方ではなく、お客様に参加してもらえるインタラクティブなものにしたい。そして同時に、山野辺氏の作った器にも、興味や関心が向けられたらいい。そんな試行錯誤の中から生まれたのが、この「Hello! You are Dish Jockey」である。山野辺氏には器の絵柄の原図を依頼し、同時に無地の器を焼いてもらうことから制作はスタート。高橋氏とモシ村氏が絵柄の動きを考え、原図を3ds Maxを使ってモデリング。カーブエディタが使いやすいという理由から、高橋氏は案件によって平面的なアニメーションの作画台として3ds Maxを使用することが少なくないという。ここでアニメーションツールキットという3ds Maxのスクリプトを使ったこと、試行錯誤しながら声のサンプリング加工によって音作りを進めたことなども公開された。また、器上に自然に見えるようプロジェクションマッピングを展開する上での光と影の演出方法についても紹介された。

斬新な発想で目にした人々を魅了した「Hello! You are Dish Jockey」は、2014アジアデジタルアート大賞展FUKUOKA インタラクティブアート部門 優秀賞を受賞し、いくつもの展示に招待され、TETSUJINの代表作の一つとして認知されることとなった。

 

神の視点で気象を操るというインタラクティブ作品

続いて紹介されたのは、長野県伊那市にある信州高遠美術館にて2016年夏に開催された「高遠KONJAKU STORY展」に出品されたインタラクティブ作品「みんな、かみさまの所為」。観客が神様の視点を持ち、雲の上から下界を見下ろしながら、MIDIコントローラーを駆使して雨を降らせたり、風を吹かせたりするという、ユーモラスなインタラクティブアート作品だ。

 

 

先に紹介された「Hello! You are Dish Jockey」ではソフトの関係上、ボタンを押した時に絵が条件によって変わるという処理を施すことができなかったが、本作ではゲームエンジンを採用することでその部分をクリアにすることを目標に、制作が進められた。また、本作よりモシ村氏がヴィジュアルプログラミングを担当することで、高橋氏が画作り、音作りに集中することが可能になり、制作作業はより効率的になった。
モシ村氏いわく、作品テーマは「自然と神様と人間」。プログラミングに当たって念頭に置いたことについて、「Hello! You are Dish Jockey」同様、MIDIで操作できるようにするということ、プログラミング初心者であるモシ村氏でも、負荷なく作業ができること、3ds Maxを用いて制作することを想定することなどが挙げられた。そこで選ばれたのが、オートデスクのStingray。MIDIが使えないという問題があったが、MIDIのサポートを含め、オートデスクのバックアップを得て、イメージに則した制作環境を手に入れることに成功した。モシ村氏はチュートリアルを閲覧し、Stingrayを学びながら手探りで作業を進め、オートデスクから技術サポートなどを受けつつ、作品の完成を目指した。

 

こちらの作品は、2016 アジアデジタルアート大賞展 FUKUOKA インタラクティブアート部門 入賞。モシ村氏がプログラミングを担当することが可能になり、TETSUJINの制作体制において新境地を開いた、エポックメイキングな作品となったことは間違いない。

数々のTETSUJIN作品の中から、現在のTETSUJINの勢いと創造性を象徴する気鋭の作品が紹介された。いずれの作品も、インタラクティブコンテンツの可能性を十分に感じさせてくれる出来栄えであった。高橋氏、モシ村氏の今後の創作活動の広がりを予見させつつ、作品発表は終了した。

 

 

セミナーレポート 「VR+インタラクティブコンテンツ制作セミナー」2