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セミナーレポート「モーション制作セミナー ~四足歩行モーションと重量武器アクション~」1

去る2016年12月20日、ダイキン工業株式会社東京支社にて、「モーション制作セミナー」が開催された。このセミナーは、モーション制作専門会社である株式会社モックスから2名のクリエイターを招き、実例を交えた具体的な制作手法を公開するという内容。
最初に登壇したのは、田邊聡史氏。「犬の歩行モーション制作」というテーマで、四足歩行動物のモーション制作を解説された。

まずは犬の特徴を知り、そこから歩行モーションのパターンを導き出す

そもそも、田邊氏が犬の歩行モーションをテーマに選んだ理由は、過去に行ったセミナーのアンケートの結果を見て、四足歩行のモーションの製作の詳細についてのニーズが非常に高いことに気付いたためだ。そのニーズの内容を想定し、語るべきポイントをピックアップされた講義内容だけあって解説は技術的なことにとどまらず、犬の歩き方を事細かに分析し、モーションのベースを設定することから始まった。

まず語られたのは、犬の総合的な特徴について。これによって、どのようなモーションを再現していくのかということの基本を設定していく。田邊氏が挙げた、犬の歩行モーションを再現する上で理解するべき事柄は、「歩様(ほよう)」「指向性」「重心」の3つだ。

移動スピードによって変化していく脚の動作パターンである歩様を念頭にモーションを作っていくが、今回は「並足」をベースにしていく。並足とはゆっくりと歩く際の歩様であり、4本の脚がバラバラに動くスタイルであるということを前提に、よりリアルな足の動き、体の動きをイメージしていく。指向性とは、常に指先だけで直立して歩く歩き方のことであり、これも犬の動きを決定づける大切な要素。そして、犬の重心のかかり方について。犬は前脚に約60%、後脚に約40%の割合で重心をかけ、体重を支えている。この体重のかかり方によって生まれる立ち姿や、歩くときの体重の移動なども、忠実に再現していく必要がある。

次に、田邊氏が制作した犬の3Dモデルを用いてモーションを作る作業に移る。モデルの犬には可動部分に関節が設けられており、現実の犬と同じような動きを作り出すことが可能になる。首の部分に2か所、胴体には胸、腹、腰に可動部分が設定されていることで、足の運びだけでなく、それに伴う体のしなりや揺れも忠実に再現することができる。使用するMayaのバージョンは2015。Mayaに搭載された基本機能を活用して、モーションを作っていく。

 

脚の動きだけでなく、体全体の微妙な揺れまできちんと再現する

最初に作るのは全体的な足運び。犬の体全体の重心を下げ、左右の脚を、犬を正面から見た状態での中心線に向かって少しだけ寄せる。これは、脚を動かした際に体全体が左右にぶれることを防ぐためだが、このように、単に脚を前後に動かすだけでなく、連動して動く体のことも常に念頭に置いておく必要がある。その考え方無くしては、リアルな歩行モーションを作り出すことはできない。

踵、足首、脚の付け根の位置を設定していくが、その位置の座標は、この段階で切りのいい数字に設定。その後の細かい位置設定に混乱が生じないような工夫も大切だ。この段階で、脚を前後に動かすモーションを付ける際は、前脚と後ろ足4本を同時に選択する。フレーム上に動きの原型をコピーし、基本的なモーションのベースは完成。

次に、タイミングを設定する。前後の脚が動くタイミングを絶妙にずらし、それぞれの脚が前に出て、後ろに向かって蹴られるモーションを再現する。前後のタイミングを設定できたら、次に左右のタイミング。左右の脚が交互繰り出される様子は、ここで設定される。これらの作業によって、足の運び自体はほぼ完了する。

次に、体の動きの設定。まず、歩く姿を微調整。体全体が少し前傾したフォルムをイメージしたほうがよりリアルに見える。そして、体全体に動きを付けていく。胴体を真上から見る視点で、体の軸を設定。右後脚が前に出て右前脚が地面を蹴ってやや後ろに引かれている状態を想定し、体前半分をやや右に弓なりに曲げる。この際に頭が中心線から右に振られるので、頭だけを元の位置に戻す。お尻の部分も右に若干寄せる。体の横へのしなりは再現されたが、これで終わりではない。

視点を正面からのものに移し、上がっている右足の方向に体の縦軸を傾け、傾斜を付ける。姿勢が固まったら、体の揺れのデータをコピーして、左右交互に繰り返されるように指定する。これらの細かな設定よって、脚の運びに沿って体が左右に揺れる様子を再現する。横方向、縦方向に微妙に体を揺らしながら動く、リアルな歩き方を再現可能にするのは、背骨の動きの微細な設定だ。

作業はさらに細かい動きの調整へと進む。脚が地面に付く瞬間の足首や膝、脚の付け根の動作。沈み込むような重心の移動。次いで、地面を蹴る際の脚の細かな動き。脚は垂直に上下動するものではないので、わずかながら斜めに降ろされ、引き上げられると言った角度調整も必要になる。こういった繰り返しの動きを微調整し、全体の歩くモーションを決めていく。最終的には反転コピーによって動きそのものを左右交互になるよう仕上げ、足の運びは完成する。

最後に、体の動きや脚の接地、引き上げに連動して動く、尻尾のモーションを設定。筋肉の動きを意識しながら、上下左右に揺れる尻尾のモーションを加えていく。

これらの作業によって、犬の四足歩行モーションが完成した。重要なのは、現実の犬の体の構造や動きの特徴を把握し、どの関節がどういった動きをする際に曲がるのか。また、胴体、4本の脚、尻尾が、どのようなタイミングで連動するのかといった基本的な知識を頭に入れておくこと。単に足が前後に送られるだけでなく、同時に弓のようにしなる背骨の動きや、重心の変化、頭の位置など、細かなパーツそれぞれの動作も想定しなくてはならない。

セミナー終盤にはツイッターを活用する形での質疑応答も行われ、大盛況のままレクチャーは終了。田邊氏の細やかで詳細なレクチャーは、よりリアルな歩行モーションを模索するクリエイター諸氏のニーズを満たす、有意義なものになったことは間違いない。

 

セミナーレポート「モーション制作セミナー ~四足歩行モーションと重量武器アクション~」2