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セミナーレポート「モーション制作セミナー ~四足歩行モーションと重量武器アクション~」2

去る2016年12月20日、ダイキン工業株式会社東京支社にて、「モーション制作セミナー」が開催された。このセミナーは、モーション制作専門会社である株式会社モックスから2名のクリエイターを招き、実例を交えた具体的な制作手法を公開するという内容。

「犬の歩行モーション制作」というテーマをレクチャーした田邊聡史氏に続いては、同じくモックス所属の徐 策氏が登壇。ゲームやアニメで目にする、大型の武器を振るう際のモーション制作についてレクチャーを行った。

 アクションゲームに欠かせない、定番モーションの解析

 単純に「武器を振り回す」ということであれば、そのモーションは比較的容易に想像できる。しかし重要なポイントは、振り回すのが「重量武器」、つまり、非常に重たいものであるということ。軽いものと重いものを振り回す動きを比較すると、当然のことながら体の使い方に大きな違いが見られる。

物を引き上げる際、振り出すタイミング、さらに、振り終わった瞬間の動きは、持っている物の重量に大きく影響を受ける。その違いを分析し、重い武器を振るからこそ発生する独特の体の挙動を反映させたモーションを作り出す。それが徐氏のセミナーテーマである。

アクションゲームなどのモーション制作を担当する徐氏は、その作業の中で、「重たい武器でのアクションをいかに表現するか」ということについて、非常に重要かつ、難しいことであると感じているという。それを踏まえ、徐氏が繰り返してきた作業の中で辿り着いたコツを公開するという説明から、セミナーはスタートした。

最初に提示されたのは、重量武器を扱う際に見られる特徴について。これを把握することで、一連の動きの流れが見えてくる。念頭に置くべきは、武器を持って立っているだけの段階から、「持っている武器が重い」ということを分からせなくてはならないということ。その時点で、体の動きの調整の必要性は生じている。

徐氏が挙げる重量武器を扱う際に見られる特徴は、まず「両手持ち」であるということ。これによって、持っている武器が、片手で扱えるような軽いものではないということが分かる。次に、扱う時に「全身の力を使う」ということ、最後に「重心の移動を利用する」ということ。重たい武器を扱うからこそ発生する動きの本質は、全身を使い、重心を移動する勢いを使うからこそ生じる。それをしっかりとモーションに取り込んでいこうということだ。

これらの特徴を具体的に表現するためには、いくつかのポイントがある。最初に考えるのは、「アクションを起こす主な力」が、どこで発生し、どこへ向かって流れていくのかということだ。それをベースに「ポーズの変化」を設定する。しゃがみ込む、力を溜める、伸びる、慣性で動く。そういったポーズの移り変わりが、重量感を生み出していく。

「タイミングとスペーシング」も重要。各関節の動きのタイミング、関節の動きと武器の動きのタイミングをずらすことで、重量感を表現できる。また、一定の時間内に移動する距離の変化を付けるスペーシングを考慮することによって、重量感を認識しやすくすることも可能。例えば、重い武器を振り回すことによって動きに加速度が変化することを忠実に反映させることで、重さを伝えることができるということだ。

 

遠心力や重力を反映させ、ダイナミックな動きを作り出す

会場のモニタに表示されたベースデータを調整することによって、徐氏のレクチャーは進行していく。初期段階のデータが見せるモーションは、大きな武器を両手で振り回しているものの、さほど重量感が感じられない。ここに、前述のポイントに沿った処理を加えていく。

まずは剣で斬り付ける一連の動作を前半の「横斬り」、後半の「縦斬り」の2つに分割。最初に前半部分を構成するポーズそれぞれに処理を施す。横斬りは体を回して真横に剣を振る動作だが、その動きの中では遠心力が発生する。静止した状態から剣を引き上げ、遠心力を利用して一気に振り切る。

その際に見られる体の特徴は、前傾しつつ、安定した構えから振り出すということ。振り回す際には剣とは反対の方向にやや体が傾斜することや、遠心力による加速によって動きのスピードが徐々に増加することも念頭に置く。剣の軌跡にも調整が必要。軌跡を認識しやすいように、剣の動きは下から上に、やや斜めに回っていく軌道を描く。

また、力を込めて斬り付けるということを考え、肘は体に寄せ気味にするなど、瞬間ごとのポーズにも微妙な調整を加えていく。剣の動きのスペーシングは、最初は感覚を狭く、徐々に広く、そして、また狭く。この処理によって、遠心力による加速、次の動作に移るための静止を表現していく。

遠心力に任せたダイナミックな横斬りを完了させたら、即座に縦斬りの動作に移る。ここで重要なのは、横斬りから縦斬りに移るつなぎとなる、「溜め」の姿勢。脚を踏み込んで勢いを収めつつ、さらに力を込めて剣を振りあげるアクションにつなげていく。

縦斬りは、重い武器を重力に逆らいながら振り上げて、勢いに任せて振り下ろす。しゃがみ込むように重心を落とした溜めポーズから伸び上がっていくアクションに重量感を加えるため、関節の動きのタイミングが大切。そして、体の動きよりやや遅れるように振り出された剣が、敵に向かって一気に振り下ろされる。振り切った時には、その勢いと衝撃を受け止めるために、体が大きく沈み込むという動作を加える。

横斬りと同様、頭の位置や体の軸も、剣の勢いに影響されて前後に大きく揺れる。この細かい作り込みが、重量感と、それに伴う衝撃を忠実に再現してくれる。

横斬りと縦斬りの異なるアクションを滑らかにつなぎ合わせることで、大剣を用いたコンボアクションが完成した。アクションゲームにおいては必須とも言える動きの構造は、見た目のダイナミックさに反した、非常に繊細で細かな処理によって生み出されていた。

徐氏はセミナー冒頭で、「私なりのコツを共有することで、少しでもみなさまの作業のお役に立たれば」と語った。その真摯な願いが伝わった、素晴らしいセミナーとなった。

 

セミナーレポート「モーション制作セミナー ~四足歩行モーションと重量武器アクション~」1