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セミナーレポート「Toon Boom Storyboard Pro & Harmony の機能を活用したアニメーション制作」

Toon Boom Storyboard Pro & Harmony の機能を活用したアニメーション制作セミナー風景

2017年12月21日にダイキン工業主催によるデジタルアニメ制作事例セミナーが東京・品川で開催された。セミナー冒頭にToon Boom Animation Inc.  Japan Country Manager Immanuel Martin氏による挨拶があり、その後、Toon Boomのアニメーション制作ツール「Storyboard Pro」と「Harmony」を使った制作事例と製品紹介、ならびにプロジェクト/アセット管理ツールProducerの紹介が行われた。

本レポートでは、その中から、「Toon Boom Storyboard Pro & Harmony の機能を活用したアニメーション制作」と題した、シンエイ動画株式会社 プロデューサー 永田 雄一氏による講演内容をご紹介する。

カットアウトアニメ制作フロー

シンエイ動画は、Storyboard Proと Harmonyを使ってカットアウトアニメを制作し、今年9月にオンエアされた。その経験をもとにしたカットアウトアニメの制作フロー紹介から講演がスタート。カットアウトアニメとは、キャラクターの手足等を各パーツに分割して、それを動かしたり入れ替えたりして演技をつけるアニメ制作手法である。尚、本講演では、オンエアされたデータではなく、セミナー用に作成いただいたデータを使って説明が行われた。

「カットアウトアニメは、一般的な日本のアニメと制作フローが違います」と語る永田氏。まず絵コンテとレイアウトをStoryboard Proで作成。絵コンテは、レイアウトとして使用することを想定して作成する。そのデータをHarmonyに取り込み、既にペイント済みのキャラクターのテンプレートをアニメータに渡して原画作業にあたるキーポーズを作成。演出作家チェック、作画監督のチェックを経て、動画・ペイント・撮影・エフェクトを一人のアニメータが担当した。

通常は工程によって担当が分かれるが、一人のアニメータが1カットを通しで担当する体制。撮影・エフェクトまで済ませたデータを演出作家、作画監督がチェックを行った。そして、作画監督のチェック後演出作家がムービーに書き出すという流れである。

カットアウトアニメ制作紹介

Storyboard Proで作成した絵コンテには、スライド等の動きやサウンド、カメラワーク等を付けることができる。カメラワークは紙に書いているわけではないので1コマ何ミリという概念がありません。ですので、実際に動かしながら、こんなスピードかなという感じで付けていきました」 (永田氏)。アニメ制作はHarmonyで実施。Storyboard Proから取り込んだ絵コンテをレイアウトにして、いきなりテンプレートと作画の両方の手段でキーポーズの作成を開始した。

キーポーズが決まったら動画から撮影までにあたるアニメーションを作成。Harmonyでは、リギング(骨を仕込んだ)されたキャラクターをテンプレートとしてライブラリ登録することで、様々な場面で使うことができる。「カットアウトアニメで重要なのがリギングです。リギングには時間がかかりましたが、仕込めば仕込むほど後のアニメーション制作が楽に なります」と永田氏は語る。

サイズ合わせも簡単に行え、シーンに合わせてポーズを付けていく。タイムラインに点(キー)を2つ打ち、それぞれにポーズを作ると、その間は自動的に動きが補間される。タイムライン上でこの作業を繰り返すことで連続した動きを作成できる。はじめは機械的なタイミングになってしまうので、スライドのスピード感や詰め方(タメツメ)を調整して演技を細かく付けていく。

「作業中にタイムシートは全然見ていません。常にこうやって動かしながら、確かめながらという感じです」(永田氏)

テンプレートにない絵や形を使いたい場合、そのパーツだけ新たに描き起こす。テンプレートと作画作業が混在できるのだ。

Storyboard Proのユーザーインターフェース

▲配置したテンプレートのキャラクターの手の部分を新規に作画しているところ

パレットツールで色を管理。シーン別の色見本はPhotoshopで作成されていたが、複数 のアニメータでパレットを共有できるので、「一人のアニメータがカラーパレットを作ったら、他のアニメータに渡して同じ色を使ってもらうというやり方を行いました」(永田氏)。

また、物体がスライドしていく部分も、絵コンテで作成した引き幅のデータをそのまま利用した。Harmonyでは、絵を描くレイヤー以外に、ペグという位置や大きさなどの情報を記録するレイヤーを作成できる。絵そのものを変形しているわけではなく、絵にペグをつけて、ペグに情報を入れることで見かけ上変形したり移動したりすることができる。

「コンテでどこからどこまでどのスピードで引くか指定していたので、そのデータをペグにコピーして先ほどのセルにくっつけました。そうすることで、コンテと全く同じスピードでスライドすることができます。」(永田氏)

一通り作成したデータを演出作家に渡す。演出作家は演出チェックというレイヤーを追加し、指示を記入する。作画監督も同様。

「作画監督はテンプレートから作成されたポージングが良いかどうかを判断します。絵を直接直す方法をとりませんでした。もちろん、テンプレートのデータをいじって直すこともできますが、アニメータによってテンプレートの操作方法が違いますし、人によってテクニックの癖がでていたので、アニメータが操作するレイヤーはいじらないで、こんな風にしてという指示を被せることにしました」(永田氏)

Storyboard Proのユーザーインターフェース

▲演出作家チェックの例

次に、透過光の効果を加える例が紹介された。画面右上のノードビューに効果のつながりが表示される。画面の下側のノードライブラリでは、かけられる効果(エフェクト等)のアイコンが並んでいる。ここから透過光のアイコンをノードビューにドラッグして光らせたいセルに接続。このように特殊効果まで作業を行い、一通り完成するとムービーに書き出して納品となる。

Storyboard Proのユーザーインターフェース

▲透過光の設定場面。画面右上がノードビュー。画面下側がノードライブラリ

「このように、絵はほとんど描かずに、テンプレートを駆使してアニメを仕上げました。テンプレートで余計な作画部分を減らし、一人のアニメータが一つのカットを担当したので、人的コストをかけずにアニメを作れたという感想を持ちました。実際に少ないアニメータでやったのですが、誰が何をやるのかという継ぎ目がどんどんなくなっていって、逆にフルデジタルでは作業分担が不明確になることもわかりました。ですので、テンプレート等デジタル技術を使う場合は、どういった作業を誰が担当するということをあらかじめ意識しておくことが肝要かと思います」(永田氏)

本講演を通して、Toon Boomのアニメーション制作ツール「Storyboard Pro」と「Harmony」を使うことで、絵コンテからアニメ制作という一連の流れが少ない人数で効率的に行えること、従来型の分業制の枠を超えてより柔軟な制作体制が組めることを、具体的に理解することができた。